歯が黄ばんで見えたり、欠けやすかったりすると、まず「むし歯かな?」と考える方が多いと思います。しかし、必ずしもむし歯が原因ではなく、「エナメル質形成不全」という歯の質の問題が背景にある場合があります。
特に乳歯や生えたての永久歯に見られることが多く、見た目の変化だけでなく、むし歯リスクにも直結します。
ここではエナメル質形成不全の原因や症状、治療法について詳しく解説します。
目次
■エナメル質形成不全とは?
エナメル質形成不全は、歯の表面を覆うエナメル質が十分に作られなかった状態です。通常のエナメル質は硬く透明感がありますが、形成不全があると表面が薄くなったり不均一になったりします。
◎エナメル質形成不全の原因
形成不全の原因はひとつではありません。遺伝的な要因が関与することもあれば、乳幼児期の高熱や栄養不足、外傷といった発育期のトラブルが影響することもあります。
さらに、乳歯に起きたむし歯や外傷が、下から生えてくる永久歯に影響を与え、部分的に形成不全が生じるケースもあります。
■エナメル質形成不全の症状
症状は見た目の変化と歯の質の弱さとして現れます。
◎歯の変色
白い斑点、黄色や茶色の着色、半透明に見えるなど、色の異常が特徴です。こうした変色は、歯磨きでは改善されないため、気がつくきっかけは保護者さまが多いです。
◎歯の欠けやすさ
硬さが不足しているため、噛む力で表面が欠けたり、すり減ったりします。これにより見た目の不調和だけでなく、噛み合わせの問題につながることもあります。
◎むし歯のリスク増加
エナメル質が通常よりも薄いため、むし歯菌に対する防御力が弱く、むし歯が早く進行する傾向があります。
■乳歯と永久歯での違い
エナメル質形成不全は、乳歯にも永久歯にも起こり得ますが、出方には違いがあります。
◎乳歯の場合
乳歯の段階で形成不全があると、歯がしみやすく、むし歯になりやすいことから食生活に影響する可能性があります。小さなお子さんでは痛みをうまく伝えられないため、仕上げ磨きなどを通して、保護者さまが早めに気づくことが大切です。
◎永久歯の場合
6歳臼歯(第一大臼歯)や前歯に白や黄色の斑点が現れやすく、見た目の悩みにつながることが少なくありません。また、生えたばかりの歯は特に柔らかいため、欠けやすい点にも注意が必要です。
■エナメル質形成不全の治療・治し方
エナメル質形成不全は自然に治ることはなく、状態に応じた歯科治療が必要です。
◎軽度の場合
色の異常だけで欠けがないときは、フッ素塗布で歯を強化したり、歯科用レジンで表面を整えたりすることがあります。審美的な悩みにはホワイトニングが検討されることもあります。
◎中等度~重度の場合
欠けやすさやむし歯リスクが高い場合は、レジンによる修復、奥歯であればクラウン(被せ物)で歯を保護する治療が行われます。
■日常生活でのケアと予防
治療とあわせて毎日のセルフケアも欠かせません。フッ素入り歯みがき粉を使って歯を強化し、定期的な歯科検診を受けることでむし歯を早期に発見できます。また、砂糖や酸の多い飲食物を控え、歯にやさしい生活習慣を整えることも予防に有効です。
【エナメル質形成不全の歯を守っていくために日頃のケアが欠かせません】
歯の変色や欠けがあると「むし歯かも」と考えがちですが、エナメル質形成不全が原因の場合もあります。乳歯にも永久歯にも起こり得るため、気づいた時点で早めに歯科医院に相談することが大切です。
気になる症状があればお気軽にご相談くださいね。